幼児教室PAL パル・クリエイション

   
パル便り


パル便り「2006年8月号(チャイルド)」

年中さんの造形の授業で,野菜を使った色水を作りました。にんじん、パセリ、紫キャベツ、アメリカンチェリー、クチナシの実の 5 種類を,すり鉢で潰して水を足し、ガーゼでこしてびんに詰める。これだけの作業ですが、これは年中さんにはけっこうハードです。この課題の目当てはもちろん植物から色水が作れるということの発見にあり,参加した子ども達は一様に驚きを持って目を輝かせます。しかしこの課題はそれだけに留まりません。どうして濾すのかビンにこぼさずに入れるにはどうすれば良いか,作業するのにいちいちその意味を掴まなくては、目的をはっきり持たせなくては、作業はスムーズにできないということを学ぶ事でもあります。

子ども達の中には色水ができるということも,一つ一つの作業もどちらもおもしろいと思って取り組める子どももいれば,作業のなると立ち往生してしまう子もいます。5回同じ事を繰り返すわけですから子どもは1回目より2回目2回目より3回目、と少しずつ理解を深めてくれるはずです。日常の生活の中で試行錯誤する体験、自らの力で遂行しようとする主体性が養われていれば,スムーズに理解してくれます。しかし中には導入が聞けない話を聞いて手順の組み立てが出来ない人もいます。話が聞けない、という事は、独立して成り立つウィークポイントではなく、日常生活での主体性の有無と連動しているのではないでしょうか。話を聞いて実際にやってみて,その過程で失敗しても,それでも忍耐強く何とか成功にたどり着くこうした事が日常にあってこそ,パルでの体験も充分に吸収できるのではないでしょうか。家庭でも話を聞く力、自分のことは自分で遂行する意志、出来なくてもトライしようとする気持ちを持ち、パルで更にそれを強化するような難しい課題にチャレンジすると云うのが効果的であり、理想的な体験の積み方でしょう。

失敗は成功の母とは,何も科学者や発明家の為にだけある言葉ではなく,むしろ小さな子どもにこそ最も必要なプロセスなのでは無いでしょうか。子どもが目的を持って物事に取り組み、失敗して更にまたトライする。そのプロセスを親はどんなまなざしで見守ったら、どんな言葉かけをしたら,どのように待ったらよいのでしょうか。考える余地もなく『これはこうしなさい』と云われたら、せかされて『ほら、こうやるのよ』とおとなが手を出してしまったら,その子に真の体験はありません。しかも『ああして,こうして。。。』と次々にやり方を指示されたとすれば,子どもは物の本質に迫る学習をした、という気にはなれないでしょう。覚えると云う学習は,それはそれなりに必要な事もあると思います、しかし「覚える」ばかりをしていくと何でも「覚えて」学と云う回路ができてしまいます。子どもは経験が少ないので自分で学習方法を修正していく事はできません。ワンパターンの学習を積んでいくと、そのパターンから抜け出せなくなる恐れも出てきます。せっかく持っている潜在能力をパターン学習でふたをしてしまって取り出し不可能にしてしまうのは何とももったいないかぎりです。

夏休みに入ります。お母さんへの宿題です。お子さんに「気付かせる」「考えさせる」「考えて行動させる事に忍耐強くさせる」をお母さんも忍耐強くやって見て下さい。

子どもが猛烈な勢い考えているぞ,そしてアッ何かをとらえたぞ,という瞬間をお母さんが感じる体験を是非してみて下さい。その手応えを味わうと子どもとどう相対すればよいか見えてきます。実りをある夏休みをお過ごし下さい。