幼児教室PAL パル・クリエイション

   
パル便り

パル便り「2009年5月号(チャイルド)」
2009.4.16. 試行錯誤の意味は・・・

 昨日プレイリトルクラスの2回目の授業がありました。プレイリトルは、主にお母さん方に子どもの特性を学んでもらう為のクラスです。けれどそのことをどのように理解していただくかが中々難しくもあります。お母さん方はついつい目の前の課題を子どもにクリアさせることに一生懸命になってしまって,子どもを観察するという姿勢には中々なれません。まあそれも仕方のないことだとは思います。子どもを教室に通わせるというと、お母さんはどうしても付き添い感覚になってしまうでしょうから。でもこのクラスはお母さんの為のクラスなのです。子どもを通して、なるほど子どもはこんなことにこのように反応していくのだな、と解っていただくのが、主目的なのです。
 昨日の造形は,「シール貼り」をしました。直方体の大きな積木に四角いシールと丸いシールを貼ったら,電車が出来た! 赤い虫型の紙に黒いシールを七つ貼ったらてんとう虫。大きなイチゴ型の紙につぶつぶを貼って、おいしいイチゴ完成!  壁に貼った大きな木に、チョウチョやカブトムシやカタツムリやトンボのシールを貼ったり・・・大きなシールから小さなシールへ,子どもはてんでにシールを剥がし,所構わずペタペタと貼っていきます。
 授業の始まりにお渡しする「本日のカリキュラム」に、「お母さんが遊びの場面を上手に設定して,楽しく話しかけをすることがポイントです。」と書きましたので、お母さん方も何とか上手に語りかけをしようと頑張ります。始めに私が直方体の積木に四角い窓と丸い車輪を貼ってみせたので、お母さん方はなるほどそのように貼るのね、と子どもをその方向に誘導しようとします。確かにこの年の子どもには,何らかのサジェスチョンを示す必要があります。そうでないと、積木とシールを渡したままではなにをするのか解らないでしょう。本当はどちらも子どもが勝手に探してきてあれこれ触ってみた挙げ句に、こんな風に貼ると電車に見えるぞ、と気が付くのが理想でしょうが、そうするには家で同じ材料をいつも手にして何度も何日も遊んだ挙げ句にやつとそこへ到達するまで待たなくてはなりません。このクラスではそれをじーっと待つことは出来ませんから、こんなこと出来るよ、という誘いかけはします。しかしそこから先は,子どものすることを見守る姿勢が大切です。「ほら,このシールは窓用の四角だから、ここに貼るのよ。全部片面に貼っちゃったら反対側のシールがないわよ。」等と,先へ先へと子どもを誘導したのでは、子どもは自ら考えること無くただ手を動かすことにしかなりません。
 子どもは,放っておくとシールを貼ったり剥がしたり、重ねて貼ったり、勝手気ままに活動していきます。
 「子どもの活動の終着点を勝手に設定して,作るものの完成予想図を大人の感覚で頭に描かないで下さいね。この年の子どもは,まだそこまでの統合力は
持ち合わせていませんが、大人の目から見たらデタラメのようでも,充分そのつもりになって遊ぶ想像力は大人より余程豊かです。」と、私はお母さん方に話します。これは、何もプレイリトルに限ったことでなく、幼児全般に言えることです。大人は、どのような造形活動にもついつい雛形を求める傾向があります。その方が理解し易いからでしょう。でも,それでは子どもの成長には繋がりません。大人の「こうして欲しい」に付き従った子は、考える力を失ってしまいます。子どもは,いろいろなことを試しながら少しずつ前進していきます。そしてその試行錯誤が彼等を鍛え,考える力を伸ばしていくのです。
 シールを貼りながら,子どもはその度に様々な気付きをしているはずです。
プレイリトルの年齢では無理としても、年中くらいの年の子なら、6枚のシールを片面に全部貼ってしまっては反対側の分が無いぞ、と気付くでしょうし、
では,片面に何枚貼ればいいだろう,といったことも考えていくでしょう。そうした気付きが、遊びの中にたくさん潜んでいるのです。
  ここまで書いてきて,まるで今年のプレイリトルのお母さんに観察力が無いように読めてしまうのに気付いて、慌てています。実は,今年のプレイリトルのお母さんは,子どものしていることを上手に見守ることが出来る方がたくさんいます。念のため!