幼児教室PAL パル・クリエイション

   

パル便り

 

パルだより2月号
 大寒も過ぎ、今次々と寒波が押し寄せてきているようです。それに伴ってインフルエンザも勢いを増し、あちらこちらの学校で学級閉鎖が続出しているようです。毎度同じことを繰り返し言うことになりますが、手洗い、うがいを怠りなくお願いします。私の場合、午前中いっぱいリトルさんと付き合っていると、鼻をかんであげたりよだれの処理をしたり手は様々なものに触れるので、昼食の前には特に念入りに手を洗っています。おかげでインフルエンザには御縁が有りません。

 先日の見学日に、年長クラスでは「板作りの家」というカリキュラムを行いました。板作りというのは、粘土を板状に延ばして矩形に切って使う粘土の技法を指します。年長児に取って難しいのは、各々の矩形の角が直角でなければならないことと、床の縦横と壁の幅を揃えること、そして壁の高さを揃えること。小学校では角度の学習は三年生で出てきますが、身近かなものを取り上げて話をすれば(机の角、折り紙の角、本の角等)「角」という概念の理解は年長児にも直感で掴めるようです。かつてこの授業を見学した一人のお母様が、「学力の経済学」という本に出てくる「非認知能力」のことを取り上げて、この「板作りの家」のカリキュラムをやり抜く力こそが「非認知能力」を育んでいることだと思う、と書いていらっしゃいました。この本について少し説明したいと思います。

 教育経済学者中室牧子著「学力の経済学」ディスカヴァー・トゥエンティワン(出版社)の内容は、「経済学」というより「世の中で信じられている教育についての常識を、実際、あるいは統計データに基づいて検証する」というものです。その中で「非認知能力」の必要性については、次のように書かれています。
 これは、シカゴ大学のヘックマン教授等の、ある幼稚園で実施された就学前教育プログラムに着目した研究実績です。「質の高い就学前教育」を受けた処置群の子ども達と、受けなかった子ども達=対照群との間でどのような差が生まれたかを彼等が40才になるまで追跡調査した結果を分析した結果、処置群の子ども達は小学校入学時点のIQが高かっただけでなく、その後の人生に於いて、学歴が高く、雇用や経済的環境が安定しており、反社会的な行為に及ぶ確率も低かったそうです。ただ、IQに関しては、処置群と対照群との差は8才頃に無くなってしまったそうです。IQ=「認知能力」は長期にわたって持続するものではなく、このプログラムで改善されたのは「非認知能力」だったという事です。「非認知能力」とは、「忍耐力がある」「社会性がある」「意欲的である」といった、人間の気質や性格的な特徴のようなものを指します。ヘックマン教授等は、学力テストでは計測することが出来ない非認知能力が、人生の成功に於いて極めて重要であることを強調、又誠実さ、忍耐強さ、社交性、好奇心の強さ、これらの非認知能力は、「人から学び、獲得するものである」と述べています。

 今までの教育論と言うと、単なる専門家の自説や個人的経験から導きだした成功体験といったものを目にしがちだったように思います。けれどこの本を読むと、教育にもエビデンス(=科学的根拠)が必須だという事がよくわかります。

ちなみに、パルの年長カリキュラムのうち、造形というより「知的発見」を多く盛り込んだカリキュラムをご紹介しておきます。10月から1月にかけて、

  • ビー玉ころがし・・・限定された箱の中に、坂道を複数入れ込み、クルクル転がって終点にたどり着くか。道と道が作り出す曲り角を如何にたくさん組み入れることができるか、それにはどのような角度をつけて設置すれば良いか。
  • デザインの連続模様・・・線対称、点対称の意識。繰り返しのパターンを認識する。
  • コリントゲーム・・・ゴールと障害物との関係の把握。入りやすいゴールは点数を高くするのか低く するのか。
  • すごろく・・・・・・ルールの理解.マーク{進む、戻る、休むをマークにする}への意識(生活の中にはどのようなマークが存在するか)
  • 板作りの家・・・・同上

  • 紙版画・・・・・・紙を貼って凹凸を作ることで出現する軌跡を理解する。それを作品に思ったように反映させることができるか。版画の複製性を考え、同じような仕組みになっているものを考える。
    パルの造形年長の授業は、このような内容を含んでいるのです。

授業のようすはこちらのフェイスブックよりごらんください。