幼児教室PAL パル・クリエイション

   
パル便り

パル便り7月号(リトル・チャイルド)

  6月18日土曜日の朝日新聞を読んでいて、「サザエさんをさがして」という記事が目にとまりました。これは土曜のBEページに毎週連載されている記事です。サザエさんの漫画を紹介し、その漫画が描かれた時代の世相を解説すると云う内容なのですが、この日の漫画は、1971年2月掲載の「ほめて育てる」。昭和の高度経済成長が終息する1970年代から、「サザエさん」には「子どもを叱れない親」がボツボツ登場するようになったそうです。しかし昨今は逆に子どもを叱りつける親のほうが突然変異的な存在のようで、「ほめて育てる」思想が全盛の時代だといいます。書店でも「ほめて・・」や「叱らない・・」といったタイトルの本をたくさん見かけます。

 しかし記者は、そんな風潮と真逆のタイトルの本に出くわしたそうで、それは、「ほめると子どもはダメになる」(新潮新書 榎本博明著)という題名の本。著者によると、「ほめて育てる」思想の源流は、70年代の米国だといいます。
『欧米の子どものしつけは、なれあいの甘えを許さない父性原理と性悪説をよりどころとするので容赦がなく、絶対服従を求めます。事の起こりは、そのあまりの厳格さを中和するため、親子の平等を説く子育てマニュアルが提唱されたことでした』 この米国発祥の「ほめて育てる」思想は、日本では90年代からもてはやされるようになったそうです。戦後日本人は何でもアメリカをモデルにしてきました。この教育方法もまさしくです。しかも日米間の国民性の差(父性社会の欧米、母性社会の日本)、歴史的背景の違いを無視して,方法だけを取り入れた輸入品だったようです。著者の辛口コメントは続きます。
『叱りたくないのは、こどもに嫌われたくない親自身の自己愛を満たす為でもある。もともと母子一体感が強く、甘やかされている日本の子どもは、このままだと優しさの渦に飲み込まれて溺れてしまいます。』(『』内は著者弁)

 私もこの本のことは何ヶ月か前に知って、早速手に入れて読んでいました。著者の主張する
「ほめてはいけない理由」の主旨は、
『ほめられることだけで備わった自信は傷つきやすく、虚勢につながりやすく、嫉妬に形を
変えやすい。ほめるだけでは、逆境を乗り越えられるように子どもを鍛えあげて社会へ送り出すことは出来ない。愛情深くみえて、むごい仕打ちをしている。』端的にまとめれば、このように要約されます。そもそもほめる子育てにシフトしたのは、「日本の子どもや若者は自己肯定感が低いから、もっとほめて自信をつけさせないといけない」といった教育界からの声が20年程前から広まったからだといいます。しかし自己肯定感を持たせる為に何もかもほめる、では余りに短絡的に過ぎます。そもそも躾(=社会化)が全うになされれば、子どもは自己肯定感が持てるように成長していくはずです。持てない理由は躾の不在でしょう。そして躾といえば、叱るべき時には威厳を持って叱る姿勢を大人が持つことだといえます。そしてそれは公共性を子どもに身につけさせる為に行わなければなりません。

 勿論著者は、金輪際ほめるな等とは言っていません。ツボを押さえ、バランスよく、ほめたり叱ったりすればいい、といいます。むしろ私が懸念するのは、皆さんが「叱る」内容を吟味
しているかということです。自分の都合で叱らなくても良いところで叱っていないか、叱らねばならないところでそれを回避していないか、が気になります。又、叱る内容が子どもの年齢に添っているかを考えてくださっているだろうかも気になるところです。

 
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