●2007.1.19.
Vol.49
今パルの造形は・・・
一月に入って年長の造形はグンとレベルアップします.ここからは,春から一年生になることを目指してその準備をしていきます.図画工作が出来るようになるばかりの準備ではありません.思考する能力を養う,物事のルールを理解する,友達と自分の意見を摺り合わせる体験を積む,といった項目を造形の授業の中で学んでいけるようにしています.私達は,この時期の年長さんが算数や国語といった教科の先取り学習をするよりも,上記のような能力を高める努力をする方がずっと大事だと考えています.幼稚園と学校ではその環境は子どもに取って激変だといって良いでしょう.友達の数は増え,大人の手は減り,そして徐々に自律を要求されていくのが小学校.その環境にしっかり馴染んでいくことができなければ、子どもに取って小学校という生活環境は苦しいものになってしまうでしょう.しかも私達が大切だと考える能力こそは学習の大もとであり,これらの力無くしては教科学習を支えきれません.と、云う訳で今パルでは中身のギュッと詰まったハードな授業が展開されているのです.
その例として一月初めのカリキュラムをご紹介しましょう.
「すごろく」
テーマ ・ゲームの内容を理解する
マークの意味を理解して,各自デザインしてみる.
共同作業の体験を通して,人と協力して意見を出し合い
一つの作品を完成させるまで皆で頑張ることを味わう
三人一組ですごろくゲームを作ります.進む,戻る,休む,のマークを
それぞれが分担してスポンジの判を作り,大きな紙に捺していってすごろくを
完成させます.各自の駒とサイコロを一個作り,実際にゲームをして見て、理にかなったものが出来たかどうか確かめます.
マークのデザインは各自に課せられた仕事,大きな紙にどのような道筋で判を捺していくかは、共同作業,そして楽しくゲームをすることも課題のうちです.導入の話しを聞いて理解すること,一人一人が意見を出し合ってお互いにそれを調整する力を保つ事が大切です.年長さんの三学期は,小学生になってから求められる能力を広げていくことを目標に進めます.
以上が授業前にお母さん方に配られる授業説明です.授業はおおむねこのように進みます.導入する時間は約三十分.私が一方的に話すのではなく,子ども達と活発に話し合いながら進めるので時間的には長いどころか足りないくらいです.うちのクラスはみんな意見を言いたくてウズウズしている子ばかりで,退屈そうに持て余している子は一人もいません.この子達に限っては小学校に行ってもむやみに立ち歩いたりして学級崩壊を招く因子だ等と言われる事はまず無いと思います.話しがデザインに及んだ時には,歩道の上の視覚障害者用表示記号にまで話しが進み,それはユニバーサルデザインと云うものだねと云う話しまでしました.いま年長さんの授業は彼等の理解度が上がるのに伴い,正にのりにのった時期だと云えます。
●2007.1.8.
Vol.48
謹賀新年
明けましておめでとうございます.新しい年が始まりました.皆さんはどんなお正月を過ごされましたか.私の今年のお正月は,何故か日頃教室に出勤しているよりハードに働いた年末年始でした.掃除,料理,お客さん・・・・・今朝玄関に飾った手作りのお飾りも全てゴミ出しで清算して,やっとお正月終了
! と云った気分です.
土曜日 ( 一月六日 ) の朝日新聞の朝刊社会面に「図工頑張れ」という記事が載っていました.他の教科に比べて図工の時間が軽視されている,今年間七十時間の図工が五十時間に減らされようとしている.これでは日本のお家芸である「ものづくり」の未来が危ういと,先生や学者たちが復権に乗り出した,と云うのが記事の内容です.ふむふむ,やっと図工軽視が取り沙汰され始めたか,と云うのが私の感想.そして、記事の内容の薄さにがっかり.だってこの危機感は,誰に向けて発信したいのですか.署名を集めて文科省に持っていく予定,とあるけれど,文科省に決定権があると考える事自体が違うんじゃないかと思うんです.問題は,私達一般国民が、図工の必要性を認識する事ですし,その想いが多数になって国を押すようにするというのが本筋でしょう.だとすれば,ものづくり云々と訴えかけても子どもを持つお母さん達はちっとも反応しないと思う.だってお母さん達は,ものづくりを我が子にさせようなんてさらさら思っていないんですから.それよりも図工の効用はもっと誰にでも身近なところにあることを強調して欲しい.図工って様々な体験,様々な学習を総動員して当たる総合的授業で、図工こそは生きていく上に必要な創意工夫を養う事の出来る大切な時間だと思う.国語だけ,算数だけ,理科だけを学ぶより,図工の力でそれらを全て統合できるのに,それをしないなんて何て勿体ない.もし図工を総合学習として位置づけたら,子ども達は算数や理科が何で大切か身を以て経験できるし,それらを実質的に使うと云う事が何たるかを実感できると思う.ただ、そこで問題は良い図工教師を育てる事が必要、ってことなんですけど.
幼児についても,つまらない学習 ( という名の訓練 ) で条件反射的に物事を覚えさせられるより,造形活動 (=
図工 ) の中に満ちている学びの要素を体験し身につけていく方がずっと有効だと思いますよ.
今年も,この「ひとりごと」をどうぞ宜しくお願いします.今年こそサボらないように頑張る予定ですので・・・
この一年の皆さんのご健康と、ご多幸をお祈り致します.
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