●2008.5.13. Vol.74 ある日の「今日のカリキュラム」から
パルでは、その日の授業ですることを、始まる前にお母さん方にプリントでお渡ししています.今日は、年長さんの「今日のカリキュラム」を紹介してみようと思います.
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幼児造形教育研究会・編の「幼児の造形」より
子ども、特に幼児の場合は、目では見ていますが、それが表現へ移る途中に心で濾過するという作用をします。゛心で見る゛と言ってよいでしょう。幼児は心で見たものを率直に絵として表現するものです.これは一見芸術家の表現と似ています.子どもはそのことによって、欲求不満を解消したり、心の対症療法を自然にしているわけです.そのことによって、人間的に大きく成長しているのです.ところが最近の幼児教育の現場を見てみますと、視覚で捉えた通りを画面に再現させようという傾向の多いことに驚かされます.親達もその方を望むものですから,何とか形のはっきり分かるものを、早く幼児に描かせようと、教師も焦ることになるわけです。しかも形というのは、幼児の捉えた形というより、大人のめに映じた形なのです.──────
今日の課題は共同絵画。みんなで地面を掘って土の中におうちを作っていこう、という設定で行います.勿論目の前には何の視覚的見本もありません。子ども達は自分のイメージを形にしていくわけですが、その活動が、上記のような大人の考え方の中で進んできた子どもには、甚だ苦手ということになります。
昨今の子どもたちの実情は、世の中に視覚映像が溢れていることも手伝って、子ども自身の体験から自然に形を紡ぎ出すことが難しくなっている気がします.
絵の中に入り込んで、自分が実際に活動している気分になって絵の世界で遊ぶ、そうした活動の中から子ども自身がオリジナリティーのある形を紡ぎ出すことができるよう、そして何よりそうした活動を真から楽しみ、成長に繋げてもらえるようにしたいと思います.
ここに出てくる「幼児の造形」と言う本の中心的著者は、林健三さんといって、造形界の大御所です。多くの造形指導書にまず監修者としてお名前を拝見します.長年お茶の水女子大学附属小学校で工作を指導され、その後十文字学園の教授をされました。実は私の小学校6年間の造形の先生です.ですから、私は身をもって造形の何たるかを体験してきました.そして自分自身が心から造形活動を楽しむことができる人間に育った、得意と思えるように育ったことが何より先生のおっしゃることを裏付けているかなと、思っています.
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