●2008.10.27. Vol.77 季節は既に秋・・・受験シーズン
忘れていたわけではないのですが、随分長いことこのページをほったらかしにしていました.気が付けばもう11月も目の前。日が経つのは、本当に早い。
何度か書きたいことがあったのですが、随分と長くなりそうで、躊躇していました.さて、では作品展間近の最も忙しいこの時期、何故今書く気になったのか、と云うことですが、今日の話は今書かないと、意味をなさないトピックスだと考えたからです。
先週、私の所に一本の電話がかかってきました.某メジャーテレビ局の番組制作担当者からでした.これは今回に限ったことではなく、毎年この時期によくかかってくる電話です.何処からどのように検索するのか不明ですが、テレビ局からは様々な依頼で連絡があります.でも私は今までどんな依頼にも応じたことはありません。今回の依頼内容は、小学校受験に関する取材と更に教室内で受験する生徒に密着したいので誰か紹介して欲しい、と云うものでした.
「・・・お願いできないでしょうか」という先方の依頼に、
「私の所は、受験塾と云うスタンスを取っているわけではありません。幼児教室という括りの中に入れられていますが、他の教室とは随分と趣を事にしていると思います.」
「ああそうですか。でも受験される方はいらっしゃるのですよね。」
「受験する事自体は、各々のご家庭の方針によるわけで、多かれ少なかれ受ける方はおいでです。又、中には受験するのにうちの授業内容が有用だと考えて通われる方もおいでです。でも、私共は受験の為の訓練に特化して子どもに授業しているわけではありません。幼児の年齢に必要なこと、でも昨今の状況の中では手に入りにくい内容を子どもに渡していきたいと考えて活動しているのです.そして申し訳ないのですが、このような電話を今までに何度も頂き、その度にこのような番組が放送されることに義憤を感じています」.
「えっ、それは何故ですか。」
「興味本位に受験熱を煽るような報道は、無責任ではないでしょうか。あなた方は仮に受験狂騒曲を皮肉ろうとして放映していたとしても、あのようにエキサイティングに映像を流し、その是非のコメントも全く無くただ漫然と流すだけでは、親の気持ちからすれば、この状態が現状でこのようにしなければならないのだと考えてしまう人は少なからずいると思います.そうした状況を作り出すことはひどく無責任だとは思いませんか。」
「あっ、それは確かにそのように思います。」
「そう云うわけで、私は御協力することはできません。」
「よく分かりました。うちとしても教育について今回のような取り組みばかりしているわけでは無いので、是非又違う番組で協力願えるでしょうか。」
「ええ、自分の理念と一致していれば、かんがえます。」
何年か前、有名私立小学校に入った御子さんで、この手のテレビに出演した生徒がいました。受験塾に通い、うちにも通っていたのですが、親御さんは何が何でもその学校に入学を望んでいて、できることは何でもするといった様子でした。この子がテレビに出るに付いては、私は全く与り知らぬことだったのですが、ある日偶然私自身がその番組の視聴者になってしまったのです。私は目を疑いました。受験前からの密着取材で、受験塾での様子、家での様子、全てを映していました.この番組は、私立小学校の受験が済んだ後の放送でした。ですから私はその子が既に合格したことを知っていましたが、何も知らずに見ている人は固唾を飲んで見ていたでしょう。落ちたらどうするんだろう、その場合は放映無しか ? と。しかも受験が済んだ直後、私はそのお母さんから
「引っかかりはしたのですが、補欠の※番なんです。回ってくるでしょうか。」
という電話をもらっています。テレビでは無事合格となっていて、補欠の補の字も出てきません。としたら、テレビはかなり嘘をいっていることになります。本当はもっと大変で不確実な出来事を、あたかもこうしたら OK といった安易なノウハウがあるのだと、見ている人に植え付ける。きっとあのテレビを見ていた受験志望のお母さん達は、画面に出ていた塾は何処だ、と探したことでしょう。こうしてこの塾はお客を増やします.なんだか悲しい世界です.
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