幼児教室PAL パル・クリエイション

   
パル便り

パル便り「2009年2月号(チャイルド)」

 インフルエンザの脅威がジワジワと近づいてきているようです。予防注射が効かないとかタミフルも無効か?とか様々なうわさが聞こえてきますが、とにかく今できる最低限のことはしていきましょう。人混みに行かない、うがい手洗いをする、室内の湿度にも気を配る等。子どもは放っておくと5〜6秒手を水にひたしただけで「洗ったヨ〜!」等と言いますが、石けんを使って20秒以上ていねいに洗うように指導しましょう。

 先日、年中の授業で「ねん土の城」を作りました。グループごとに自分達の城を作り、宝を城の中にかくします。城ができたら戦いごっこしますが、戦いごっこといっても敵の城を壊したり、粘土を投げ合ったりといった遊びをするわけではありません。ジャンケンで先攻、後攻を決めて、相手の城に出掛けていき、城には手を触れずに何処に宝が隠してあるかを推理して言い当てるというルールで遊びます。言い当てるチャンスは3回。グループ内で話し合いをし、合意のもとで隠し場所と思われるところを相手チームに告げます。当たったら相手チームの宝をゲット!後攻のチームも同じようにして当たれば宝をゲットできます。両方当たってしまえばいわば宝を交換するのも同然なのですが、見つける喜びは大きいようです。

 まず宝を隠す…隠し場所を一か所しか作らなければすぐに言い当てられてしまうので、ダミーをいくつも用意しなければなりません。しかも子ども達が作るのはお城なのですから、ただ山を作って宝を埋めてもだめで、塔をつくたり王様やお姫様の部屋を作る等、お城の構成要素をたくさん作って、その中で何処に隠すのが一番敵の意表を突くかを考えるわけです。城壁には大砲を据えたり、塔の上や門の脇には兵隊を見張りに立てます。子ども達が少しずつ自身が城の中にいる気分になって行くのがわかります。

 この日、私のクラスは、6人ずつの2チームで活動しました。男の子だけのチームと、ほぼ女の子で組まれたチームで当てっこをすることになりました。女の子チームが先攻で、3回目にみごと宝のありかを言い当てました。次に男の子チーム。ここで当てなければ、宝が手に入らないとあって真剣。迷って迷ってなかなか場所を限定できません。2回外れて、ついに3回目。6人の男の子たちはそれぞれ顔を見合って中々口を開きません。「うーん、ここかな?」「だめだよ!ちがうよ!」「じゃあ、どこ?」「ここだと思うけど…」「やっぱりここかな?」…「じゃあここ!」「みんないいよね」「ウ、ウーン」…

ハズレー!男の子の表情は一斉にくずれ、一人が泣きくずれてしまいました。結局、女の子チームが宝を半分分けてくれたので皆一件落着となったのですが…。こんなに物事に真剣になることなんてほとんどないといっていいでしょう。仲々こんなチャンスは手に入るものではありません。こうした体験を通して子どもは多くのことを学んでいきます。右向け右式の訓練をいくらしたところで、腑に落ちた思いは定着しないのです。気持ちが大きく動いて感情がゆさぶられて、そこから様々に対処の仕方を学んでいくのだと思います。大人は形だけの有り様を子どもに要求するのではなく、遠回りのようでも子どもが本当に生きて得心する機会を子どもに与えるべきだと思いますし、それが子どもにとって「遊ぶ」という学びなのだと思います。