幼児教室PAL パル・クリエイション

   
パル便り

パル便り2月号(チャイルド)

暖冬だと思っていたら、大寒波が襲ってくるようで、読みにくい気候ですね。今まで鳴りを潜めていたイ ンフルエンザが、勢いを得て来ているようです。予防対策をお願いします。

 1月は年長クラスで見学日がありました。造形は粘土で家を作る、「板作りの家」というカリキュラムでした。板作りと云うのは、粘土を板状に延ばして矩形に切って使う粘土の技法を指します。年長児にとって難しいのは、各々の矩形の角が直角でなければならないことと、床の縦横と壁の幅を揃えること、そして壁の高さを揃えること。小学生に説明するような方法では当然伝わりません。かといって説明不能かと云うとそうでもなく、彼等は生活感覚の中で何となく掴んでいるものがあるようで、実際に身近な物を取り上げて話をするだけで(例えばドアの角、机の角、本の角等)、直角の意味を直感的に捉えていきます。又、壁の高さを揃えるのも、手近なもの(板きれ,粘土べら等)を使って基準の長さを測り、その長さを次に使う板粘土に写して同じ長さにすることを自ら考え出す子もいました。私達は、こうした力こそ大切な力だと思っています。

 見学日のアンケートに、一人のお母さまが「学力の経済学」という本に出てくる「非認知能力」のことを取り上げて、この「板作りの家」のカリキュラムをやり抜く力こそが「非認知能力」を育んでいることだと思う、と書いていらっしゃいました。この本のことはご存知ですか? 私達も気になって読んでいました。教育経済学者の中室牧子さんが執筆され、アマゾンで三週連続一位(ビジネス・経済書ランキング)になった本です。「経済学」と云うと、教育とは掛け離れた分野に思えますが、内容は「経済学」と云うより「世の中で信じられている教育についての常識を、実際、あるいは統計データに基づいて検証する」と云うものです。その中で「非認知能力」の必要性について、次のように書いてあります。

 これは、シカゴ大学のヘックマン教授等の、ある幼稚園で実施された就学前教育プログラムに着目した研究実績です。「質の高い就学前教育」を受けた処置群の子ども達と、受けなかった子ども達=対照群との間でどの様な差が生まれたかを彼等が40才になるまで追跡調査した結果を分析した結果、処置群の子ども達は小学校入学時点のIQが高かっただけでなく、その後の人生において、学歴が高く、雇用や経済的環境が安定しており、反社会的な行為に及ぶ確率も低かったそうです。ただ、IQに関しては、処置郡と対照群との差は8才頃に無くなってしまったそうです。IQ=「認知能力」は長期にわたって持続するものではなく、このプログラムで改善されたのは、「非認知能力」だったそうです。「非認知能力」とは、「忍耐力がある」「社会性がある」「意欲的である」といった、人間の気質や性格的な特徴のようなものを指します。ヘックマン教授等は、学力テストでは計測することが出来ない非認知能力が、人生の成功において極めて重要であることを強調、又誠実さ、忍耐強さ、社交性、好奇心の強さ、これらの非認知能力は、「人から学び、獲得するものである」と述べています。

 今まで教育論というと、単なる専門家の自説や個人的な経験から導きだした成功体験といったものを目にしがちだったように思います。けれどこの本を読むと、教育にもエビデンス(=科学的根拠)が必須だということがよく解ります。一度読んでみてはいかがですか。

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