幼児教室PAL パル・クリエイション

   

パル便り

パルだより1月号 リトル/チャイルド

 朝晩は寒い日が多く、天気予報で師走並みとか一月並み等と言われると、余計に寒く感じてし
まうこの頃です。ノロウィルスの集団感染が発生したとのこと。この時期はいろいろなものがはや
るようです。いつもと変わらず注意しながら生活しましょう。
 先日、年中クラスで「箱工作」をしました。何でもありの工作なのですが、だからこそ難しい。
手順に沿ってする工作も必要ですが、できれば一から自分で考えて作る工作が本命です。「手順
編」で基礎を養って、そこから思考を始める活動へと誘うのがこちらの狙いです。下手に見本など
見せると、それに追随する子が出てくるので、できれば見本は使いたくありません。でも、年中
にして既に「箱と言えばこんなものを作ることだ」という概念をどこかに持っているようで、自動
車や家、4本足の動物等々に走りがちです。今回私は、坐しているカエルを作って子供に見せまし
た。「箱は四角いからカクカクした自動車やお家を想像しちゃうけど、カエルのようなぐにゃぐ
にゃ動物だってできるし、粘土で作る気持ちで考えてもいいよ。」と、彼らの思考の幅を広げる
声かけをしてみました。その一言で「消防車! 」「ショベルカー!」といった声はあまり聞かず、
いつもと違ったチョイスがたくさん出てきました。1人の子がトミカのミニカーの箱をたくさん
持ってきていました。トミカの箱は自動車の絵がプリントされていて、それだけで自動車の趣で
す。「先生、道路を作ってもいいの?」「もちろん! 坂道にしたらトミカの箱が走るかもね。」
そこから彼の試行錯誤が始まりました。坂道を作るには? 高低のある細長い箱をいくつか選び、
それを並べてその上に道路の紙をつけていくようです。真っ直ぐではつまらないと思ったのか、
カーブをつけて、道に塀もつけてどうにかコースができました。ですが、逆にそのコースが仇でト
ミカの箱はスルスルとは降りてきません。どうしても指を使って押してやらねばならず、カーブに
修正を加えたり四苦八苦していました。次に彼の姿を見たときに「そう来たか! 」と私は大いに驚
かされました。自動車を作る子もいるだろうと用意しておいたちょっと太めのストロー(タピオカ
ドリンク用)で、トミカの箱を一生懸命吹いて坂道を走らせているのです。指で触って動かすので
は何か嘘くさい、と考えたのでしょう。ストローというアイテムで見事にカスタマイズ成功!
こうした作業の中で、彼の思考はどう育まれたのか。これこそが子ども達に渡したい課題なので
す。こんな経験をたくさんすることで、子ども達は考える力を身につけていきます。
 今までの日本の教育は、「何を習熟させ、知識をつけるか」を重視した結果、「どう学ぶか」
という視点が欠落していました。それは日本の教育が教科中心で組み立てられてきたせいなのかも
知れません。決められた基準に合わせるために先生は一方的に教え、生徒は覚えたり、訓練した
り、あるテストを攻略することを要求されます。そこにはジャンルを超えた自由な学びの発想がな
いのです。そうすると、どういうことが起こるのか。「国語は好きだから頑張る」けど「数学は
苦手だからやらない」という子どもが出てきます。大学の試験科目が選択制なのも、試験に出な
いからやらないという発想も、教科化による弊害と言えます。こんな教育の仕組みの中で育てら
れた子に、豊かな発想で日本企業を蘇らせて欲しいと望むのは甚だ虫が良いと言わざるを得ませ
ん。先月のバルだよりもこんな話でした。しつこいと思われるかも知れませんが、今の体制で行
われていく教育が役に立たなくなる日は、意外と早くやってくるかも知れません。現状の考え方で
はダメなんだ、という認識をみんなで共有しましょう。
       良いお年をお迎えください。                   高崎

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