幼児教室PAL パル・クリエイション

   

パル便り

パルだより4月号 リトル/チャイルド

 一つ上のクラスに進級する皆さん、新しくパルの授業に参加する皆さん、2023年度の授業が始
まります。皆さんようこそ、私たちは全力であなたたちをサポートしようと考えています。
 保護者の方々にここで一度、パルの効用について考えていただきたいと思います。「子どもが嫌
がらないで通うから」という消極的な動機しか持って貰えないのは悲しいので、私たちは何を目
標に日々子供達と相対しているのかをお話ししたいと思います。
 今日本の教育は、世界とは周回遅れで実施されているようです。文科省の最新指導要領の改訂
は、小学校では2020年に行われまた。その前は平成30年に行われたのですが、その時は「我が国
のこれまでの教育実践の蓄積に基づく授業改善の活性化により、子どもたちが未来社会を切り開
くための資質・能力を一層確実に生育することを目指す」「生きる力を育む、各学校の特色ある
教育活動の展開」等と説明していました。それまでの教育を容認しながら「生きる力」などとい
う漠然とした言葉を使っています。そして最新の2020年改訂では「グローバル化や人工知能・AI
などの技術革新が急速に進み、予測困難なこれからの時代、子ども達は自ら課題を見つけ、自ら
学び、自ら考え、自ら判断して行動し、より良い社会や人生を切り開いていく力が求められる」
としています。そして特に付加すべきは、英語学習の促進とプログラミングの導入だそうで、どう
も付け焼き刃的な取り組みに見えてしまいます。「自ら課題を見つけ〜自ら判断して行動し」につ
いてどのように取り組んだらいいのでしょうか。未だに計算ドリルや漢字の書き取りは姿を消して
いませんし、成績表も無くなっていません。今までの教育は、かつて世界の工業化が進んだ時の
人々の知識の標準化を目指した教育システムでした。それを取り入れた日本の教育は、その頃と
何も変わっていません。いつまでも「認知能力」の向上にばかり目を向けて子どもたちに学びの
強制を続けていくと、日本には受動的な人間しか育たなくなるでしょう。私たちは、幼児が知識
を貯める教育に疑念を持っています。かつて文字や数量の学びは小学校から、と唱えていた文科省
は今、「数量や図形、標識や文字などへの関心、感覚」を養えと指導要領に示すようになっていま
す。これがどんな形を示唆しているのかは判然としませんが、世の大人は短絡的に小学校一年生の
先取りを示されていると勘違いするでしょう。こうして幼児のうちから知識の学びが歪な形で始
まってしまうことになります。
 パルに通う方の中には、もう一つ別の体操教室に通う人もいらっしゃいます。子どもたちは概
ねパルの体操が大好きです。特に年少から年中にかけては、まるで冒険ごっこをしているような内
容で、子どもはさまざまな想像を胸に遊んでいるような感覚なのでしょう。なぜそんなスタイルを
取っているかというと、それは子どもたちに能動的な身体活動をして欲しいからです。恐れを抱い
たり、出来るできないに拘ったりしては、のびのびと体を動かすことはできません。ではなんで他
の教室が必要だと思う方がいらっしゃるのでしょう。推測ですが、スタンダードな体操教室が行っ
ている種目を完璧な形で身につけさせたい、それを行うときに発せられる厳格な指示に子どもが
ちゃんと従うようにしてほしい、と考えられるからでしょう。そのような要望は既に子供をして
「強制的学び」に追い遣っていることになります。年長児になれば、どうしたら完璧なパフォーマ
ンスが出来るか、自発的に取り組むようになります。そういう気持ちが湧いてくるのを待つこと
は、体操することにとどまらず、子どもの物事への取り組みをバックアップすることに繋がりま
す。
 4月の年長の造形カリキュラムに「ステンシル」というのがあります。画用紙を半分に折って鋏
で穴を開けるように切り、偶然の形を作ります。これを色画用紙の上に置いて絵の具をつけたタ
ンポで捺していくのですが、綺麗に捺すと色画用紙には切った穴の形がくっきりと現れます。これ
をいくつか同一画面に繰り返すのですが、どのように配置したら美しく見えるだろうかを探ってい
くのがこのカリキュラムから学べる課題です。まず「穴を開けるように切る」で引っかかる子も出
てきます。しかし繰り返すうちに、子どもたちは「どうしたら面白い作品ができるだろう」とい
うことにのめり込んでいき、型を作るときに工夫をし、色を選ぶことにも敏感になり、並べ方の
工夫もどんどん精度が上がってくるようになります。「いくつかやってご覧」とは勧めますが、
やっていくうちに子どもの方が止まらなくなり、何枚も繰り返し試すようになります。大小の型を
作って組み合わせて画面に捺すなどという工夫 も、自身で発見する子が出てきます。このような
時間の中で、子どもたちはどれほどたくさんの試行錯誤をしているでしょう。いくつかの形が存在
する空間の配置は? シンメトリカルに並べてみたら? 全ての形を色画用紙の中に収めるのか、は
み出して捺すとどうなるのか、子どもたちはどんどん実験を進めていきます。一つしか正解のない
問題を解くのと違って、多様で深い学びが展開するのです。
 コロナのような見えない存在との共存や、温暖化対策といった地球規模の課題が山積する中
で、最も必要とされるのは豊かな人格や失敗を恐れない行動力で、平安な社会づくりを実現でき
るクリエイティブ・リーダーの育成です。それには認知能力の育成に留まるのではなく、認知能力
と非認知能力の融合によって子どもを育んでいく必要があります。このような考えに従って私たち
は子どもと接しています。どうぞよろしくお願いします。

授業のようすはこちらのフェイスブックよりごらんください。